2024.11.19
全国で活躍する医学部卒業生に在学中の思い出や母校・医学部への思いなどを語っていただく「卒業生リレーエッセイ」。第3回は、医学科7期生の武田クリニックの武田浩院長にメッセージをお寄せいただきました。
もともとは電気関係に関心があり、工学部に進学したいと考えていましたが、中学・高校の時に十二指腸潰瘍を患い、何度か入退院を繰り返す時期がありました。入院時に医師や看護師の皆さんによくしていただいたこと、伯父が医師であったこと、当時が今でいう就職氷河期にあたる時代背景だったこともあり、最終的に医学を志すことになりました。
高校時は工学部を希望していたこともあり、物理や化学には関心がありましたが、正直生物にはそれほど力を入れて学習していませんでした。しかし、医学部に入学してから基礎の生化学の授業がとても新鮮に感じられて、特に勝沼先生の理論的な体系に基づいた生化学の授業は興味深かったです。そこから糖代謝について関心を持ちました。学部を卒業してからは消化器に進むか糖代謝に進むか悩みましたが、医学部に入った時に刺激を受けた糖代謝を最終的に選択し、現在の糖尿病専門医につながっています。
「病気を診る」のか「患者さんを診る」のか、様々な考え方があると思いますが、私は患者さんに寄り添い、親身になって診ることが良医ではないかと思っています。大学病院に残る方もいらっしゃいますが多くの方は市中病院、クリニックに勤務することになります。それぞれの病院に応じた役割がありますので、私自身は現場で患者さんの家族を含む社会的背景を含めて、一人ひとりの患者さんを丁寧に診ていくことを常に心がけています。
実習生や研修医の受け入れを行っていますが、学生や若い研修医と話をすると、基礎に関する知識が不足しているように見受けられます。医学部に進んだからには臨床面も大事ですが、基礎の学術的な面白さを見つけてもらいたいと思います。基礎を理解するからこそ、その先の研究医や臨床医としての芯ができると思いますので、ぜひ診療のコアとなる部分をもって良医になっていただきたいと思います。
糖尿病の専門クリニックとして伊勢原に開業して25年ほどになります。糖尿病のデータ上では合併症における死因は癌が多いので、合併症を引き起こさないように事前に細かな検査を実施しています。通常の採尿・採血検査の他に、定期的に動脈硬化、眼底検査、腹部エコー、自律神経等の様々な検査や栄養指導を行うことで、透析まで病気を進行させないようにし、併せて診察までに全ての検査を行うことで患者さんの待ち時間を有効活用しています。また、検査技師、栄養士、看護師といった医療スタッフと共に、受付等の事務スタッフにも神奈川県の糖尿病療養指導士の資格を取得させ、スタッフのモチベーションアップとともに、患者さんが誰にでも相談しやすい環境づくりにも注力しています。