2024.07.10
全国で活躍する医学部卒業生に在学中の思い出や母校・医学部への思いなどを語っていただく「卒業生リレーエッセイ」。第1回は、医学科卒業生の同窓会「星医会」会長で社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス会長の谷口佳浩先生にメッセージをお寄せいただきました。
もともと子どもが好きだったこともあり、小児科医になりたいと思って医学部に入学しました。ところがポリクリ(臨床実習)で小児病棟を回った時に、どうしても感情移入してしまい先輩に相談して小児科は諦め、消化器内科に方向転換しました。先輩から誘っていただいたのですが、私自身が当時再発を繰り返す十二指腸潰瘍に苦しんでいたこと、何よりも医局の雰囲気がよかったこともあって決断しました。当時教室を主宰されていた三輪教授から、「楽しくやりましょうね」と言ってもらえたことがとても印象的でした。
所属していた硬式テニス部で得たものが今も生きています。規律がとても厳しかっただけに、体力はもちろん、忍耐力も培いました。ここで得た同期生や先輩や後輩とのつながりは今も大きな宝になっています。
「全人的な医療を実践できる医師」だと考えています。患者さんを単なる一生命体として見るのではなく、その社会的・経済的背景からその人の価値観を受け入れ、その人の人生に寄り添った医療を実践する、それが本当の「良医」だと自分なりに考えています。
東海大学では医学部創設以来、「良医の育成」を理念に掲げています。高齢化社会の中ではこの考え方がますます大事になっており、半世紀も前に、既にこの理念を掲げられた初代医学部長の佐々木正五先生をはじめ創設当時の先生方は、正に先見の明をお持ちだったのだとつくづく思います。
全人的医療の実践という観点に立てば、医療界のみならず、視野を広く待った見識を持つことだと思います。特に現代の医療は、専門分野の細分化はもちろん、一方では機能として急性期医療から介護までもが細分化されており、それぞれが互いにリスペクトし合い、また密に連携し合いながら、一人の患者様に向き合っていかねばなりません。その為にも是非広い視野を持って、全人的医療を実践する姿勢が必要です。
これから医師を目指す人には、若いうちに急性期のみならず慢性期や看取りまであらゆる医療の現場に触れること、知ることが大事だと思います。
また東海大学は総合大学として、看護学科はもちろん、他学部の学生さんと接する環境も整っていることは大きな強みではないでしょうか。
医学部の先生方には今後も「良医の育成」を理念として掲げ続けてほしいと思います。これまで私自身、患者さんの声に耳を傾け、親身になって診療に当たる同窓生を多く見てきました。その理念をこれからも大切にして頂きたいと思います。さらに、学内で学び働く後輩や学生たちには、卒業生が元気に働く活力ある姿を見せ続けてほしいと願っています。後輩たちは先輩の姿を見て育ちます。医師として日々忙しいのは当たり前、でもやりがいを感じられる、そんな環境をつくってもらいたいですね。
また、東海大学の強みを生かした取り組みにも力を入れてくれればと思います。医学部では近年他学部との連携した研究に力を入れていると聞きます。これも東海大学だからこそできることです。明確なビジョンを掲げ、このような取り組みを更に推進していただきたいと思います。
私共の法人は、埼玉県、神奈川県、静岡県で高度急性期医療から介護、在宅支援サービス等を展開しています。特に神奈川県の県央二次医療圏では、人の誕生から終末期に至るまでの医療機能と介護サービスの、ほぼすべてのラインナップを取りそろえていることが特徴です。これら全施設において、診療情報等は電子カルテで共有されており、グループ内の施設や在宅サービスを利用される患者さんは、スムースな連携の下で、それぞれの病状にあわせた適切な医療と介護サービスを受けることができます。またそれぞれの施設、特に医療へのアクセスは「地域連携室」での一元管理の下、ワンストップで適切なサービスに繋げる取り組みも出来つつあります。
また疾病予防にも力を入れており、健診施設では「健診を確実に医療につなげること」に力を入れています。現在私が施設長を務めている「カラダテラス海老名」がその役割を担っています。多くの方が健康診断を受けていますが、病気が疑われる結果が出ても実際に受診する人は2割程度と言われています。その割合をできるだけ高めることで、健康的な生活づくりを支援したい。そのため、「血液検査の結果に異常があればその日のうちに診察を受けられるようにする」、「結果に対する不安を払拭するための後日面談を取り入れる」などさまざまな工夫をしています。
多くの方々の尽力によって作り上げてきた現在の形を基に、今後も継続的に質の高い医療を提供し、得られた適切な利益を持続可能な医療提供のための原資とし、そして職員へ還元し、それが社会への貢献、還元にもつながり、そしてさらなる医療の質向上につながるという「社会貢献スパイラル」をしっかりと回していきたいと考えています。